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200平方メートルのアートが広島空港に誕生「核のない世界へ 広島メキシコ友好壁画」
原爆投下から80年を迎える2025年、広島空港に「核のない世界へ 広島メキシコ友好壁画」が完成します。広島とメキシコの長年にわたる友好関係、そして核兵器廃絶への共通の願いをテーマにした本作品は、10月15日(水)に開催される完成披露式典でお披露目されます。
当日はメルバ・プリーア駐日メキシコ大使、日本被団協代表委員の箕牧智之氏、広島県被団協理事長の佐久間邦彦氏らが出席し、壁画に描かれた被爆者の遺族も臨席します。
本プロジェクトは、2014年に締結された広島県とメキシコ・グアナファト州の友好提携を背景に誕生しました。マツダのメキシコ進出をきっかけに始まった交流は、東京オリンピックでは広島県がメキシコ代表団のホストタウンを務めるなど、県を挙げた友好関係へと発展。核のない世界を目指すという両国の共通の理念を形にしたのが、この壁画です。

制作を手がけたのは、世界25カ国以上で壁画を手がけるメキシコ人姉弟アーティスト、アドリー・デル・ロシオ氏とカルロス・アルベルトGH氏。広島空港の東側増築棟・北面と東面の2面、計200平方メートルを超える壮大なスケールで描かれました。被爆者山下泰昭氏や七宝作家・田中稔子氏から被爆証言を聞き、広島の歴史と祈りを受け継ぐ形で制作された作品です。

壁画の最大の特徴は、核廃絶の象徴として両国のノーベル平和賞受賞者が描かれている点です。メキシコからは、世界初の非核兵器地帯条約「トラテロルコ条約」を主導した外交官アルフォンソ・ガルシア・ロブレス氏、日本からは長年にわたり被爆者支援と核兵器廃絶を訴え続けた森滝市郎氏と山口仙二氏が登場。日本被団協(2024年ノーベル平和賞受賞)からの正式な依頼を受け、被爆者の意志を永遠に継承する象徴として描かれています。
北面(空港正面)には、平和の象徴「原爆の子の像」のモデル・佐々木禎子さんの肖像と原爆ドーム、慰霊碑、平和の灯が配され、訪れる旅行者を迎えます。
禎子さんを中心に描かれる人々は、被爆証言を語り継いだ多くの被爆者を象徴しており、折鶴や鶴のモチーフには「人類の長寿と存続」への願いが込められています。平和の灯が消え、鶴が舞い上がる構図には、「核廃絶が成し遂げられたとき、初めて人類が永続の道を歩む」という祈りが重ねられています。
一方の東面では、被爆当時に命を落とした子どもたちが描かれ、その記憶が今も生き続けていることを象徴。中央にはロブレス氏、森滝氏、山口氏の3人が大きく描かれ、その周囲にはメキシコの国花ダリア(逆境の中でも咲く力)や広島の市花キョウチクトウ(復興の象徴)が咲き誇ります。さらに、メキシコ・グアナファト州を象徴するオトミ族の少女が折り紙のカエルを手にする姿も登場。これは2024年、友好提携10周年を記念してグアナファト州から広島県に寄贈された像をモチーフとしています。

また、広島空港開港記念モニュメント「地球・一個の球体のために」と呼応する形で、複数の円柱が折鶴へと変化する表現も。世界中から平和と核廃絶を願うメッセージが集まり、広島から再び発信される構図となっています。
企画提案・実施を担ったのは、メキシコ人の父と日本人の母を持つグティエレス一郎氏と実氏の兄弟。兄の一郎氏はピースボートの国際コーディネーターとして被爆証言航海を支援し、弟の実氏はマツダ・メキシコ支社で両国の友好関係を支えてきました。彼らの想いと国境を越えた絆が、この壁画に結実しました。

メキシコは、1967年に世界初の非核兵器地帯条約「トラテロルコ条約」を主導し、その後も核兵器禁止条約の提案国として国際社会をリードしてきました。本プロジェクトは、同条約機構(OPANAL)からの正式な賛同も得ており、非核外交の精神が色濃く反映されています。
広島とメキシコが共に歩んできた友情、そして人類が共有すべき「核のない未来」への希望を描いたこの壁画。
その前に立つとき、私たちは改めて平和の意味を問われることでしょう。
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執筆者
chief editor:F.ISHIOKA
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